<写真>

<地図>松江市灘町
<碑文>
旗
杉山一平
つきつめたような顔をしてあるいてゐる高等学校の生徒の
マントを見るたびに 私は涙のでるやうななつかしさをお
ぼえる 私がその時分をすごしたのは裏日本のみづうみに
沿つたちひさな古風な街であった 秋から冬にかけて よ
くみづうみをわたつてくる夜霧に 街はすつぽり包まれて
しまった あの白い霧に黒マントを翻へしながら 憑かれ
たやうに足早に あゝいくたびか夜つぴて 私はあるき廻
つたことであらう それは寄宿舎の廊下にともる燈のやう
な若年の孤独と寂寥を揚げてはためいてゐる 黒い旗であ
った あゝいまそれらの旗は 激しい時代の風にどのやう
な音たてゝ鳴つてゐるのであらう
建立の記
杉山一平は大正三年に生れ 昭和九年に旧制松江高等学校
を卒業 今なお旺盛な執筆をつづける詩人 また映画評論
家である 今度母校創立八十五周年に当り同窓有志相図り
氏の処女詩集「夜学生」の中から一篇の散文詩を撰び わ
れらが青春の三年間を過した母校と この地によせる限り
ない愛情と感謝をこめて 茲に詩碑を建てる
平成17年4月8日
<建立>
平成17年(2005年)4月8日(碑文より)